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千葉大学講義|2020年1月7日

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学校給食を変えたい

で、こういうふうに地域と混ざり合って仕事をしていくと、さっき産業教育審議委員っていう県庁の仕事もしてますよって言ったけど、これ。

学校給食ですね、学校給食の先生とか家庭科の先生に僕らが料理を教えてます。

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地域でただビジネスだけやってるんじゃなくて、僕たちは食のフィールドごと上げていこうとしている。

そのためには、学校で食べているものを少し変えていきたいなっていう気持ちが僕にはあって、こういう活動をしている。
学校給食ってどんなものが出てるかっていうと、あまり地域のものが使われてない。例えば千葉県の学生が食べてる給食って、千葉県産のものがどれぐらい使われてるのだろう。数パーセントなんですね。

 

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それはいろんなハードルがあるから。いちばん大きいのはお金だよね。

一食200円かな。それぐらいなんですよ。

200円ぐらいで料理しろって言われるとなかなか難しいよね。そうなってくると、やっぱり輸入して、もう出来上がったものを食べてたり、ってことになる。
でもそうなると、それを食べ続けたみんなは何をもって美味しいとか、何が健康なのか安全なのか、わからない人になっちゃうんじゃないかなって僕は思ってて。
これ、ほぼ慈善事業ですけど、僕たちはこういうレシピを提案します、っていうのをやってるのね。そこで作ったものがこれ。木更津に唯一の養豚場があるんですけど、平野さんっていう。そこの豚を使ったハンバーグ。すごい美味しいですよ。

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で、その豚と、上にのってる目玉焼きは、木更津の耕す農場っていうところの、有機の平飼いで健康的に育った鶏から生まれた卵。トマトとか、野菜、ハーブとかも地域のものを使ってる。

「こういう料理を子どもたちに食べてもらえませんか?」っていう提案をしている。

どこにお金を使うのか? 誰に払うのか?

あとほかにも、これは生産者とのイベントですね。ケータリングっていうんですけど。外で料理するイベント。

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ここ、ワイン用の葡萄畑なんです。千葉県にワイン用の葡萄畑があるんです。そこでみんなで来年の豊作を願いながら、語り合いながらご飯を食べようっていう。
こうすることで何が起きるかっていうと、今まで知らなかった千葉県をみんなが知ることができる。

ここにきた人たちも「えっ、千葉県にワイン用のブドウを育ててる人がいるの?」みたいな。行ってみたい。それでできたワインがこれですよ。で、飲んでみる。美味しい。
そうやって、今までフランスとかスペインのワインを飲んでたけど、「せっかくだから千葉の八街のワインを飲んでいこうよ」ってなったら、どうですか? ここにお金が巡りますよね。ここにお金が巡るっていうことは、この生産者は次のステージにいけるよね。で、この生産者が発展していけば、みんなはより美味しい安全なものを食べたり飲んだりすることができる。
だからどこにお金を使うのか、誰に払うのかっていうのがすごい重要になってくる。

そういう活動も僕たちはしています。

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何のためにやるのか? 誰のためにやるのか?

最初の話に戻ると、僕はあんまり優秀な人間じゃなかった。で、やりたくもない料理をやりました。だけどすごくいい人たちに巡り会って、方向を決めてくれた人たちがいて、一生懸命に料理に向き合って。

一生懸命向き合ってグッとやったんだけど、体を壊したりとか、精神的にも疲れちゃった時期もあります。

で、好きだった料理を諦めます。

でも、諦めて違う業界を見たことで、やっぱり好きっていう熱がまた出てくる。
その後、体を壊すぐらい集中してやってたときよりもさらに働いた。

なのに体が壊れなかったのはなぜかなって考えたんだけど、さっき、25歳の頃から僕は人のことを考えて働けるようになったって話をしたよね。やっぱりエネルギーって自分のことより誰かのために使おうってなるとすごい量になる。
25歳までは自分のためにやってた。とにかく金を稼がなければ。ずっとそれでやってた。でも壊れちゃった。
でも25歳以降の僕は、さっきも言ったけど残業を300時間とか平気でやってた。寝ずにみんなのことを考えてやってた。

そしたらね、あっさり25歳のアベレージの給料を超えた。それで、かつ体も健康だった。
これからみんな、働く環境っていうものを自分で選んでいくと思うんだけど、「何のためにそれをやるのか」っていうのをテーマにしたらいいと思う。あと「誰のためか」。いちばんは「誰のためか」っていうのがいいと思う。
僕は顔を合わせている人たちのものを使うことでその人たちが潤っていくことに喜びを感じるし、そういう組織づくりをしたいと思っている。そう考えていると必然的に地域のもの、地域の人と関わるっていうことになっていく。
僕は「木更津市で起業するんだ」とか「社会のために」とかって最初からやったわけじゃないんだけど、やっていくなかで、そこにエネルギーを感じたっていう話になります。

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重要なのは人

ちょっとまとめちゃいますけど、起業でも就職でもいいけど、いちばん重要なのは人だと思います。どんな人と仕事をしたいか。

でもね、一瞬では見極められないと思う。まだまだ子どもだから。イヤだなって思っても、ちょっと無理矢理でも、飲み会に行ったりとかプライベートで付き合ってみたりとかしたらいいと思う。

それでもイヤだったらやめればいいと思う。やめる自由がみんなにはあるから。
でも、そのちょっとした付き合いすらもイヤだっていうんだったら、たぶんみんなのこと誰も受け入れないと思う。最初はそうしたちょっとした努力をみんなしてほしいなあと。
こんな感じになっちゃいますけど、よろしいですか?

— はい、野口さん、ありがとうございました。

こうして講義が終わり、次は学生との質疑応答タイムに。
学生たちのなかにはすでに起業を考えている子たちもいて、わからないこと、相談したいことなど、いくつか思いのこもった質問が飛び交います。

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その1「スタッフのモチベーションをどう上げる?」

野口

質問はありますか?
なかなかこんな機会ないですよ。今だから聞ける。こういう時間を大切にしてね。
お金の話でもいいよ。お金の話、大事だからね。お金の話をパッとできるかが、起業できるかっていうところだったりするから。
なんか、フリーハンドで喋っちゃってますが(笑)

学生
モチベーションの話が出てきて、ちょっと疑問に思ったんですけど、人のモチベーションを維持したり向上させたりするのはすごく難しいと私は思っていて。
例えばその、お金であったりとか、働き方っていう面でモチベーションを向上させたっていうお話だったんですけど、人は一緒に働く中でいいことだけじゃなくて、いざこざだったりっていうのが当然あって、モチベーションをマイナスにしてしまうところがあると思うんですけど。
お金とか働き方といったこと以外でモチベーションを向上させるために何か意識されたことがあったら教えていただきたいです。

野口

僕がスタッフに対してですね?

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学生
はい。


野口
スタッフの好きなことを聞く。知ること。
例えばその子が釣りが好きだとするじゃないですか? 僕も釣りの話ができるようになりたいなあと思うし、たまには一緒に釣りに行ってみたりとか。

好きなものを理解しようとするのは大事かなと。
答えになってますか?


学生
自分が合わせていくっていうことでしょうか?


野口
そうだね。
今の話も繋がってて、当然、好きな人と仕事をしていると思うんですね。僕は一緒に仕事している人が好きなんですね。周りの人のことが大好き。その人が好きなものを好きになりたい。なので努力をする。
最後のほうで「努力してみてね」って言ったけど、もちろん努力しても「やっぱり合わねえや」っていうこともあるわけだけど、それはちょっと大事じゃないかな。

その2「まずはコンセプト」

学生
質問というより相談みたいになっちゃうんですけど。
私は今、地域のマルシェの運営をしていて、そのマルシェに居酒屋の店主さんに出てもらっていることが多いので、やっぱりちょっと大人が多いコミュニティになってしまっていて。
私は地域の子どもとかもそこに入れ込んで「子どもの学校以外の場所」みたいなものを作りたいな、大人も子どもも楽しめる場所作りみたいなものを目指したいなと思ってるんですけど…。


野口
僕らもマルシェとかたまにやったりするんだけど、どっちかっていうと、大人の集団なんだよね。当然運営していかないといけないから。
大人ができることって、子どもに合わせることだと思う。

その居酒屋の店主さんたちのやりたいことが何なのかを僕はわからないけど、それを理解した上で、運営者として「子どもに来てもらいたいです」っていうのをしっかり伝えてるのかな?

そこをしっかり伝えて、居酒屋さんだから居酒屋料理じゃなくて、子どもたちの料理を提案してもらったりだとか、雰囲気づくりっていうのをする。
そこにコンセプトを立てないといけない。コンセプトはありますか?

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学生
今までコンセプトがなくて、行き当たりばったりでやってきて。
最近、「市場を楽しむ」っていうスローガンで、まだぜんぶは決まりきってないんですけど、今は「来てくれる人プラス、出店者がやってて楽しい場所」っていう。出店者が楽しいと来てくれる人にも伝わるんじゃないかなっていう感じで。


野口
すごくハッキリしてるのは、コンセプトを作る。
例えばだけど僕たちの街には「子ども祭り」っていう、つまり「子ども」っていうシンプルなコンセプトのお祭りがあって、そこに屋台が出たりするんだけど、子ども祭りだから通常500円で出している店もみんな100円とかで子どもサイズを作るの。
そういうふうに、コンセプトを立てて、じゃあ誰に来て欲しいの? っていうことだよね。ターゲット。そして、子どもたちと相性のいい商売にしていく。
そういう人たちと組み合わせていく。
「誰でも彼でも楽しいよ」っていうのは難しいよね。

コンセプトに子どもがあるから、そこから発展させることができるわけで、まずコンセプトが大事。
真面目に答えるとそうなっちゃうけど、すごくいいと思うし、僕らもいろんなイベントを仕掛けてて、さっきの養蜂のイベント、これは子どもたちと大人たち、両方来てるんだけど、どっちかっていうと子ども向けのイベントなの。

子どもたちに蜂や自然と触れ合ってもらったり、当然そこには自然食に近いご飯を食べてもらうっていうテーマでやってるから、それを楽しめる大人が来るっていう感じ。
子ども向けにすると収益性が難しくなるから、ある程度そういう気持ちのある大人を集めたほうがいい。思いに共感してくれる大人。イベントって、ミスマッチの人が入ってくるとやっぱりおかしくなっちゃう。
こんな感じの答えで大丈夫ですか?


学生
ありがとうございます。

これで野口のお話はおしまいです。
起業しようと考えている学生のみなさん、自分なりの働き方、生き方を探しているみなさん、そんな方たちに少しでも何か伝わることがあることを願っています!
お読みいただきありがとうございました。

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03 誰のためにやるのか?
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